お祈り(スンバヤン)をしよう!
お祈りをする前に
お祈りをするために、寺院に行く前にやっておかなくてはいけない事、準備するものがあります。
- 沐浴(マンディ)
- お寺に行く前に、沐浴をして身も心も清らかにします。
昔は、村の共同沐浴場や、お寺にある沐浴場でしましたが、現在は、ホテルや自室のシャワーでOKです。
もちろん、お水ではなく、お湯でのマンディでもかまいません。
- 正装しよう
- お祈りのために寺院の境内(奥庭)に入るには、正装しなくてはいけません。
<男性の正装>
腰にサロン(バリ語では、カマンといいます)を巻き、その上からサプッという布を巻き、スレンダン(腰帯)をします。
上半身はサパリという襟付きの上着を着て、頭にはウダンと呼ばれる頭巾をします。このウダンをカッコ良く巻くのが、バリ人男性のおしゃれでもあります。
サパリは、学生服のような厚手の生地ですが、上の写真のような薄い生地のシャツでもかまいません。
お寺など神様にお祈りする時は、サパリやウダンを白系統のものにすると良いと言われています。
<女性の正装>
女性も腰にサロンを巻き、スレンダンをします。上半身にはクバヤというブラウスを着ます。
このサロンの巻き方や、クバヤのデザインには、流行があり、若い女性は競うように最新モードのクバヤを着ます。
家寺でのお祈りや毎日行われるお供えの時は、サロンとスレンダンだけで、上半身はTシャツや普通のシャツだけ(男性はウダンもします)という格好ですが、寺院にお参りに行く時は、クバヤやサパリを着て、ビシッと決めて行きます。 - お祈りセット
- 寺院でお祈りする時に、お供え物以外にお祈りの際使うお線香やお花など、お祈りセットを持っていきます。
お祈りセットのお花は、お祈りに行く前に家の庭に咲いているお花を摘んでいきます。お花は、枝についているものを使い、地面に落ちているもの、虫が食っているもの、墓場に咲いているものは使えません。
ジュプン(プルメリア)や香りのよいチュンパカ、サンダットなどが好んでつかわれます。
また、ヤシの葉で作った飾り物と、お花、ボロサンと言われるヤシの葉で作った小さな供物、中国の古銭をバナナの葉っぱで巻いた「クワンゲン」という供物も持っていきます。ただし、クワンゲンは、絶対になくてはいけないか、というものではなく、準備できなければ、お花とお線香だけでもいいそうです。
また、毎日のお供えに使うチャナンを使う事もあります。
- 寺院に入れない人
- 次のような状態の方は宗教的なけがれの状態にあると考えられているため、残念ながら寺院に入ってお祈りをすることはできません。
- 怪我をして血を流している人
- 生理中の女性
- 近親者がなくなって日が浅いかた
- 出産をしたばかりの女性
お祈りの手順
準備ができたら、いよいよお寺に行ってお祈りを行います。
お寺の境内に入る時、門の内側に聖水が置かれている事があります。これは、これから境内に入る方を清めるための聖水で、頭の上から振りかけます。
お祈りはマンクー(お坊さん・祭司)の指導のもと、集まったグループごとに行われます。境内に入った時、先のグループのお祈りが行われていたら、邪魔にならないところで待っていましょう。
前のグループのお祈りが終わったら、いよいよ、自分の番です。お線香に火をつけて、直接地面に座ってお祈りの準備をします。男性はあぐらを、女性は正座をし、自分の前にお線香とお花を置きます。
マンクーの合図に合わせて、お祈りを始めます。
- お線香の煙に両手をかざし、清めた後、左右の手を額の前で合わせて、お祈りします(1回目のお祈り)
お祈りは、マンクーの鈴の音に合わせてお祈りします。鈴の音がしている間お祈りをし、鈴の音がやんだら、1回のお祈りを終了します。 - 次は、白い花を取り、お線香の煙にかざし清めた後、左右の合わせた手の指先でお花を挟んでお祈りします。(2回目のお祈り) お祈り後、お花は耳や髪に刺してもいいですし、地面に置いたままにしてもいいです。
- 次は同様にお線香の煙で清めたクワンゲンを指で挟んでお祈りします。(3回目のお祈り)
クワンゲンがない場合は、何色かのお花を合わせて、即席のクワンゲンを作ってお祈りしてもOKです。
お祈り後のクワンゲンは、中国の古銭は持ち帰り、その他はその場に置いたままにします。
- 次もまたお花をお線香の煙で清め、合わせた両手の間に挟んでお祈りします(4回目のお祈り)
- 最後は、1と同じようにお線香の煙で両手を清め、何も持たずにお祈りをします。(5回目のお祈り)
- お祈りが終わったら、マンクーやマンクーの助手の方から聖水を頂きます。前の方から順番に回ってきまから、自分の番がくるまで、その場で待っていましょう。
最初に、聖水を頭からかけてもらいます。聖水を掛けてもらうときは両手を左右に広げ手のひらを上に向けた聖水をもらうポーズをします。聖水を掛けてもらうときは必ずこのポーズをします。
- 右手を上にして両手を重ね、マンクーから聖水を手のひらに頂きます。
- 右手に受けた聖水を飲みます。7と8を3回繰り返します。
聖水を飲むことに抵抗がある方は、飲むふりをするだけでもいいです。 - 最後にまた聖水を右手で頂き、自分の頭に掛けます、再度マンクーから聖水を掛けてもらいます
- マンクーが差し出したお皿の中にある聖水で清めたお米(ビジョ)を右手でひとつかみ取ります。
- 取ったお米を左手に移し、右手で数粒、額やのど元に貼り付けます。
- 最後にお米を数粒飲み込み、あまったお米は払い落します。
以上で、お祈りは終了です。お線香の火を消して、他の方のお祈りが終わったら立ち上がり、境内から立ち去ります。
残ったお花やお線香は、その場に置いて行ってもかまいません。
これらのお祈りのやり方ですが、地方やお祭りの内容などによって、お祈りする回数や、もつ花の種類が変わる事があります。何を持ってお祈りしなさいと言うのは、都度マンクーから指示が出ますがバリ語ですので旅行者には理解できません。周りを見て、他の人のまねをしてお祈りをしてください。
どの神様にお祈りをするのか?
お祈りをするとき、誰に、何を祈るのか?という質問を良くされます。
お祈りをするさい、マンクーがその都度なんという名の神に祈るのかを指示します。しかし、すべてバリ語で行うので、旅行者や外国人には理解できません。
誰に祈ると言う事より、祈ると言う事が重要なので、外国人である私たちは具体的な名前の神様ではなく、漠然とした神にお祈りする気持ちがあればいいと思います。
また、どんな事をお祈りしているのかをバリの人に聞くと、
「世の中が平和で、安らかでありますように、とお祈りしている」と、言われます。
あれが欲しい、金持ちになりたい、と言った個人的なお祈りではなく、世の中の善と悪のバランスが調和し、穏やかで平穏な世界が続く事をお祈りしましょう。
トリ・サンディオ
今回紹介したお祈り(スンバヤン/ムスポ)は、寺院のお祭りなど儀礼の際に行うお祈りで、これとは別に儀礼とは無関係な場面で行うお祈りにトリ・サンディオ(Tri Sandya)というものがあります。
このトリ・サンディオは、イスラム教の1日5回の礼拝(ショラット)と同じように、日の出・正午・日の入りの1日3回、供物を伴わずにマントラ(お経)を唱えることで直接神様と交信を行うお祈りで、バリ・ヒンドゥー教の団体(パリサド)によって近年考えられたものです。
パリサドは、供物を行うお祈り(ムスポ)とは別に、毎日3回このトリ・サンディオを行う事が非常に良い事と広めており、バリ島のローカルTVでは、朝昼晩とこのお祈りを行おうとビデオクリップを流しています。
また、幼稚園や学校でも、このトリ・サンディオとマントラを習い、毎日あるいは満月や暗月の日に行っています。
しかし、なかなかトリ・サンディオが一般社会には広がらず、学校を卒業した後も毎日トリ・サンディオを行う人は少ないそうです。さらに、トリ・サンディオは近年から始まったものなので、年配の方は知らず、寺院や家寺の祭礼にも関係しないので、なかなか広まるのは、難しいそうです。